遊具のない遊び場

年をとってから見返して笑えるようなに 。twitter @michiru__nagato note https://note.com/a_maze_amazes_me

なぁなぁな2月24日

今日は文藝サークルの校正会だと思っていたので、好きなアニメのサントラを聴きながら大崎駅に向かっていたわけだが、車中でラインを開いて、どこの教室でやるのかを確認したところ、校正会は明日だったということが判明した。基本的に電車内で音楽やら小説を読んでいるので、その時間が無駄だったと後悔することはあまりない。だから、その時もまあ天気もいいし長い散歩だと思えば悪くはないのかもしれないと思った。それでも駅についてすぐ帰るのはつまらないので、サンマルクでれんげ荘を読み進めていた。初めてサンマルクチョコクロを食べた。あれ、めちゃめちゃ美味しいですね。77ページで止まっていた(ラッキー)時間をもう一回流し始めると、クロワッサンの生地みたいにサクサク進む。気分もアゲアゲ。168ページ目でキリがよく、それと同時に小説内で喫茶店が出てきたのもあり、久しく行ってないコーヒー豆屋に行くことにした。小説内でウェイトレスの所作や言葉遣いが自然だったみたいなことが書かれていたせいかもしれない。

駅の大学側の出口に向かい、一度野ざらしの喫煙所でタバコを吸ったが、サンマルクでたくさん吸っていたから気分が悪くなり、一口だけ吸って灰皿に落とした。

そこから道沿いに歩いて、戸越銀座の方へ出る。少し歩くと赤提灯と接骨院がある。そうすると右手にドルチェバッハがある。

店内は落ち着いていて少し暗い。照明の明るさもあるが、そもそも店内の壁やら床やらも外観と同じく暗めの木の板が張られているのでお昼でも時間の流れがとても静かに感じられる。

ゴールデンマンデリンを頼む。ドルチェバッハはその場で焙煎してくれるので、待つ時間が20分ほどある。その間にれんげ荘を読み終える。解説はまだ読まない。ぼんやり頭の中で読み返して、なんとなく考えながら家に帰って、寝る前に読む。少し時間を置かないと、物語が解説の枠の中に綺麗に落ち着いてしまって、そのうちブックオフに売ることになる。まあ、それをやったからといって売らないとは限らないが。

そもそもドルチェバッハに通うようになったのは大学3年の10月ごろだったように思う。確か後輩と暇つぶしに戸越銀座をぶらぶらしていた時だった。5限に大学が開催している無料SPI講座に参加するまでの暇つぶし。それでコーヒー豆を買ったのが最初だった。久しぶりに人から物を買ったという感覚に新鮮さを覚えた。スーパーとかコンビニだとか、ある程度の規模感をもつ店だとマニュアル通りなんだろうなってなんとなく察するので、そこにいる店員以上でも以下でもない人に「ありがとうございました」とか言われても嬉しくもないし悲しくもならない。けど、ドルチェバッハだと嬉しくなった。個人経営っていうのもあるだろう。それにスーパーやコンビニは明るすぎるから。

店主は口ひげを伸ばしていた。3ヶ月行かなかっただけでも、変化があるもんだな。小説を読み進めていくと、天ぷらを揚げる音みたいな拍手が聴こえて、これは聞き覚えがあるなあと思っていたら、まさに自分がドルチェバッハを気に入った日の再現をされた。キースジャレットのケルンコンサートが流れ始めた。超絶名盤。これを聴いて自分はこの店に愛着を持つようになったのだと思い当たる。店内のBGMが、ぽっと浮かんできて、バックグラウンドが抜けて、ちゃんとした名前の音楽に変わった。その選曲に仲間意識を感じたのも確か。あまりに出来すぎている。徳利というアーティストがサウンドクラウドに上げている「徳利からの手紙」という曲の最後に、「生きていると、これ漫画だなって思う瞬間がある」っていうラインがあるんだけど、思い出して喰らった。1人で何してんだろね。で、焙煎が終わり、豆が渡される。それで「ゆっくりしていってね」的なこと(ニュアンスは覚えているが言葉自体は覚えていない)を言われて(それはいつも通り)、ちょうどあと20ページで終わるまで、サービスで出されるコーヒーを調節しつつ飲みながら、読む。

読み終わって、バッグに豆を入れて、上着を着て、会計する。スタンプカードと現金を出す。店主に「久しぶりだったんですね」と言われ、暗にこれから来れないかもということを伝えるために「今年で大学卒業なんですよね」と返す。勤め先を聞かれたので、目黒の方と答える。近いんですねと言われる。そこでつい、そうですね戸越銀座に美味しいパン屋もあることですし(マジで美味しいパン屋がある。一回買ってみたら、めちゃめちゃ美味しかった)、とまた来るみたいなことが口から出る。レシートを渡される時、「頑張ってくださいね」と言われて、なぜか嬉しくなる。見ず知らずのおっさんのエールがちゃんと、届く。不思議だ。なんにせよ、またドルチェバッハに行くだろうなと思う。そして行くたびに大学生の頃を思い出すのだろう。まぁ店が潰れてない限りは。

駅に戻る。タバコを吸う。電車に乗る。大宮の未来屋書店で本を買おうと思った。バイトを辞めた時に何故かギフト券を五千円分もらったからだ。これも不思議。それを使って「ヒトの目、驚異の進化」という本を買おうと思った。大宮について、未来屋書店がどこにあるのか検索すると割と離れていたので、ジュンク堂に行くことにした。歩くのは嫌いではないが、イオンの中にあるタイプだったので品揃えが悪いだろうなと思いジュンク堂にした。でも、そもそも文庫版の発売はまだだったらしく、目的を失った。それでも前までジュンク堂大宮店には面白いところがあったので、まだそのままかどうかを確認しに村上春樹の棚に行く。残念、面白さはなくなった。前までは、村上春樹のハードカバー本の間にこっそりOSHO(バグワン・シュリ・ラジニーシ)の本があったんだけど、なくなっちゃった。けど、好きな作家の最新作とハヤカワNFの本を買った。ビジネス書とか自己啓発本の題名を見るたびにげんなりする。強い言葉ばっかり目につく。ただ強い言葉を使った本でも内容があるはずだと最近考え直した。けど、やっぱり抵抗がある。レジの近くの棚に芥川賞受賞作があった。結構売れていた。社会人になって趣味を読書だと言うようになると、会話のネタのために本を読む機会が増えるのだろうかと不安に思ったが、そもそもそれでもいいかと投げやりに肯定しておく。最近受賞した古川真人は自分が一時期、気が狂って応募したことのある新人賞を取っている人だったので名前は知っていた。地が硬い人そうなだと思っていた。まだ古川の著作は一度も読んだことがないので、これを機に読んでみるのもいいかもしれない。そのうち大学に行って文芸誌を読もうと思った。車窓から見える梅の花が綺麗だった。

家の最寄駅に着く。退屈さや予定が崩れた時、その徒労感から自分の行動が無駄だったかもしれないと、かたくなになってしまうことがあるが、やっぱり、視点が変われば、無駄な時間はないのかもしれないと思う(ただし金がある場合に限る)。心が貧乏なんや〜